佐藤ひろ美 半生記 第8回:これからも一緒に音楽を創りだしていきたい仲間 ─ ElementsGarden

 自身が「アーティストとしての青春時代」と語るリバーサイドミュージックを経て、2004年に佐藤ひろ美は株式会社CMIを立ち上げる。立ちあげメンバーはリバーサイドミュージックの上松範康と菊田大介、そして当時佐藤のマネージャーを担当していた若林豪。
 「CMIは音楽制作会社で、私は所属シンガー。そして音楽制作集団としてElements Gardenをスタートしました。Elements Gardenは上松さんと菊田君、そして藤間仁くんに藤田淳平君。みんなリバーサイドミュージック時代の仲間ですね。たまに勘違いされるんですが、私はElements Gardenのメンバーじゃないんです」
 リバーサイドミュージックからCMIへ。これは佐藤ひろ美の音楽活動に大きな幅を持たせることになる。その一つが作曲への挑戦だ。
「会社と新レーベルを立ち上げて、そこで何をしようかと考えていた時に、若林君が「佐藤さんの作詞作曲でCDを作ろう」って言いだしたんです。それまで作曲なんかしたことなかったから断っていたんだけど、結局やることになって。それが『Sugar Season』でした」
 最初は及び腰だった『Sugar Season』も、無事に4枚のCDをリリース。作曲家としての第一歩を記した。
「それができたのも、Elements Gardenのみんながいたから。私の作曲はいつも鼻歌で、そのメロディーをElements Gardenのメンバーが楽譜に起こしてくれるんです。これは今でも同じ。今をときめくElements Gardenをはなうたの楽譜起こしで使うなんて、恵まれすぎた環境ですよね(笑)」
 実は佐藤は、音楽を専門的に勉強したことがない。そんな彼女にとって、音楽知識の豊富なElements Gardenのメンバーは、音楽的によき相談相手と言える。
「知識のない私が作曲できるのも、彼らに出会って色々教えてもらったり、アドバイスしてもらえているから。でも、私が作ったメロディーをいじったりはしないんです。一人のクリエイターとして尊重してくれる」
 それはElements Gardenのメンバー同士でも一緒。お互いをミュージシャンとしてリスペクトしたうえで、それぞれの感想や意見を交換できるのが、Elements Gardenなのだ。
 もちろん佐藤がアドバイスすることもある。
「リバーサイド時代から、みんなが作る曲を聞いて、感じたことを伝えてきました。ボーカリストとして歌いやすいかどうか。聴き手として、どんなふうに感じるか。自分の歌わない曲でも、同じように感想を伝えているんです」
 アドバイスは音楽に止まらない。
「Elements Gardenのみんなより、私の方が年上だから、プライベートではお姉さん的な立ち位置なんですよね。色んなことを相談されたり、一緒に考えたりしてきました」

 そんなElements Gardenの魅力の一つは、生楽器を大胆に取り入れた楽曲作りにある。当初から弦アレンジが得意なメンバーが集まったこともあり、生楽器へのこだわりは強い。その上で打ちこみの方が楽曲に合うという判断もできる。この柔軟性もElements Gardenの魅力だ。
 そして生楽器を大切に使うElements Gardenは、その頃の佐藤ひろ美の求める音楽性と同じ方向を向いていた。
「私の好きな音楽でした。だからElements Gardenにお作曲・編曲してもらえると、自分の好きな音楽ができるんです。一緒にいる時間も長くて、お互いを理解しているので、私の曲作りに参加しやすいというのも、いい関係だと思います」
 他のクリエイターとも一緒に仕事もするが、Elements Gardenとの仕事だからこそ生まれる佐藤ひろ美の良さがある。「アーティストとしての青春時代」を一緒に送ったからこその関係性と言えるだろう。
 そんな佐藤に、Elements Gardenのメンバーを簡単に紹介してもらおう。まずは上松範康さん。
「彼はCMIを立ち上げて責任感が強くなりました。音楽への取り組み方も変わって、サウンドも人間的にも成長したと思います。ただ、天才肌の人なので、普通の人と感覚が違うんですよね。だから色々難しいところもあるんですけれど、そのままもっともっと大きなミュージシャンに成長していってほしいと思います」
続いては藤田淳平さん。
「淳平君は努力の天才です。元はエンジニアだったんですが、BGMや着メロの仕事をする中で、作曲や編曲に興味を持ち始めたんです。センスも良くて、それならということで『Angelica』のオリジナル曲を担当してもらったんです。今聴いても名曲ですよね」
 努力家でまじめな藤田淳平さん。ジャズピアノを習って2年で、飛蘭ライブにキーボードで参加したことでも、そのことが伝わってくる。佐藤自身も今後に大きな期待を寄せるクリエイターの一人だ。
 そして藤間仁さん。
「J-POPを作らせたら天下一品。アニソンは、玄人好みのカッコいい曲を作ります。そういう楽曲作りのスタイルをずっと貫いてきた。だからこそ今があるんでしょうね」
 現在はギタリストとしても活躍中。しかし、その実力とは裏腹な面もあるという。
「普段は、本当に普通の人。昼間に仕事をして、夜にはちゃんとリセットできる。音楽の才能はものすごいけれど、それ以外でもきっと成功した人だと思います」
 菊田大介さんは、彼が新人の頃から、その成長を見てきたと佐藤は語る。
「CMIでは、最初上松さんのアシスタントだったんだけど、上松さんは天才肌の人なので、直接教えたりはしないんですよね。だからずっと自力で頑張ってきたんだけど、その才能がランティスの齊藤プロデューサーと出会ったことで開花しました。茅原実里さんというシンガーに出会えたのも、成長した要因かも」
 加速度的に成長していく菊田さんを話す時の佐藤は、弟の成長を喜ぶ姉のようにも見える。こいういう関係性がCMIの良さの一つなのだろう。
 中山真斗さんは、Elements Gardenの若手のホープ。
「中山くんは、色んなことを自分で吸収できる人。Elements Gardenの他のメンバーの良い所を取り入れながら、自分なりの世界を作れる人です。今は飛蘭の曲を頑張っていますが、彼も齊藤プロデューサーに会って、より能力を発揮させているところですね」
 そして一番の若手が母里治樹さんだ。
「彼は本当の天才。これからの成長に注目してほしいですね。そして母里くんをどう成長させられるかが、これからのElements Gardenのテーマになっています」

 上松範康さん以下、実力者から若手まで。これからの活躍に注目されるElements Garden。そんな彼らと一緒に仕事をすることは、佐藤ひろ美にとっても大きなモチベーションになるという。
「ずっと私の曲を書いてほしいし、私も彼らの曲を歌いたい。Elements Gaedenに認められるシンガーでいたいですね」
 それはSに所属しているアーティストたちも同じだ。
「Elements GardenにSのみんなが認められてもらえるように頑張ってほしい。彼らの仮歌を歌うだけでも大変なんです。飛蘭は、そこで認められて今の位置に成長しました。歌の世界の厳しさを教えてくれるのも、Elements Gardenなんです」