年代別コラム 第5回:2004年編

~その後の活動に大きな影響を与えた2004年の出会い~

2004年は、その後の佐藤ひろ美にとってターニング・ポイントになった1年。その中でも大きかったのがCMIの設立と『GALAXY ANGEL』ですね。上松範康くんたちとCMIを立ち上げて、当時ブロッコリーの社長さんだった木谷高明さんと出会い……そして今の活動に繋がっていくんですねえ。

木谷社長と初めてお会いしたのはお食事会。私は「ブロッコリーの社長さんとお食事だよ」としか聞かされていなかったんですが、実は面接みたいなものだったみたいなんです。そこで色々とお話しさせていただいたら気に入っていただいたみたいで、『GALAXY ANGEL Eternal Lovers』のオープニングが決まったんです。それが『Angelic Symphony』でした。実は『GALAXY ANGEL Eternal Lovers』の主題歌のボーカルを決める時、新しいアーティストにという話になっていたそうなんです。その時ブロッコリーのスタッフさんが、私を推薦してくれたらしくて。でも、木谷さんはその時に佐藤ひろ美を知らなかったらしくて、それで面接を兼ねた食事会になったそうなんです。

『GALAXY ANGEL Eternal Lovers』の仕事が決まった時は、嬉しかったけれど重さも感じました。幅広くメディア展開されている人気コンテンツの最新作の主題歌を歌うことは、自分がステップアップするチャンスというのはもちろん、今後を左右する大きな仕事。それまで錚々たるアーティストが曲を担当してきた中でファンに受け入れてもらえなければ、もうこの業界で歌って行けなくなる。それくらいの気持ちでした。だから練習もたくさんしましたよ。それまでの私の歌はバラード系が多くて、やさしい歌い方をしていました。bambooさんの曲だけはガールズロックで、元気でかわいく歌っていましたけど、いわゆるアニソン風の歌い方はしていなかった。なので、このレコーディングを迎える前に、アニソン風の歌い方を勉強して練習したんです。その中で辿りついたのが『Angelic Symphony』の熱くドラマチックなボーカル・スタイルでした。

以前もお話ししましたが、『カナリア』でデビューさせていただいた時、「5年歌い続けられるのだろうか?」と思っていました。ブロッコリーさんとの出会いはデビュー4年目。だからこそ、このチャンスを逃したら今後はないと思っていた。CMIがスタートして最初の大きな仕事でもあって、いろんなものを背負って挑んだお仕事でした。それだけに初お披露目した横浜アリーナの『ブロッコリー・ザ・ライブ』や、全国のゲーマーズさんでの店頭イベントで受け入れていただけて手ごたえを感じられたのは嬉しかったですね。そしてそれが結果につながった。『Angelic Symphony』の2万5000枚という数字は、ブロッコリーさんがこれまで出したCDの中で一番だそうです。あれから6年。ライブやイベントでも、『Angelic Symphony』はずっと歌い続けている、大切な曲の一つになりました。起用してくれた木谷さんや、イベントなどを頑張ってくれたブロッコリーのスタッフさんには、本当に感謝しています。そして受け入れてくれて、応援してくれたファンの皆さんにも。

この年は楽しいお仕事も多かったのですが、その中で印象的だったのが『みどりのくにのこえだちゃん』と工画堂スタジオさんの『Sequence Palladium3~飛沫の天地~』ですね。『みどりのくにのこえだちゃん』は、ずっと子供向けの歌を歌いたいと思っていた夢が実現しました。タカラさんが『みどりのくにのこえだちゃん』を動かすにあたって、テレビ番組を始めるということで、その主題歌を担当させていただいたんです。それが『こえだちゃんのおはやっほー♪』。今聴いても、名曲だなあって思います。イベントは1回だけだったんですけれど、もっとやりたかったですね。2歳、3歳の子供たちがたくさん集まってくれて、歌に合わせて踊ってくれるのがかわいいの。そういえば握手会の時、子供連れのお父さんが「実は僕もファンなんです」って握手していったのも、いい思い出です。『Sequence Palladium3~飛沫の天地~』は、音楽担当の方が以前サティアグラハのCDをプロデュースしてくれて、コミケをお手伝いさせていただいた方。つまりメジャーデビューのきっかけになった方なんです。その方から、今度はプロのシンガーとしてお仕事をオファーしていただけた。本当に嬉しかったです。

この年はCDもたくさん出ましたが、様々なイベントに出演させていただいた年でもありました。イベントと言えば2月14日の『しょんぼりバレンタイン』。ねこねこソフトさんの『みずいろ』は、発売後も出演声優さんたちと仲良くさせてもらっていて、一緒に遊んだりごはんを食べたりしていたんです。そんな中で「『みずいろ』もイベントがあればいいのにね」という話題が出た時、「それなら私たちでやっちゃおう」ということになって動き始めたんです。会場のライブゲートさんやねこねこソフトさんにもご協力いただいて、本当に素敵なイベントになりました。出演者もお客さんもテンションが高くて、本当に楽しかったのを覚えています。私が作ったキャラクターソングも歌ってもらえたしね。本当に良いイベントでした。

2004年は新しい出会いから、お仕事の幅は大きく広がった1年。それまで美少女ゲームで歌わせていただいていた私が、コンシューマーゲームで歌い、子供向け番組の主題歌を担当させてもらい、『ひろみでんぱ』のようなラジオ番組も任せてもらえるようになりました。デビューして5年は頑張ろうと思っていた4年目。それまで順調なだけではなく、挫折もたくさんありました。その経験があって、CMIがスタートし、新しい出会いがあった。その中で精いっぱい頑張ったから、こうして10年目を迎えられているんだと思います。もちろん1年1年が私にとって大きな意味を持っていて、毎年毎年全力で頑張ってきました。でも、そんな中で2004年は、本当に大きな1年だったなあと、今振り返って思います。